疼痛ゼロの日シンポジウムin高松:第2回難治性疼痛診療システム研究会のまとめ
テーマ~痛み難民を救う:わが国に適した慢性痛診療システムを求めて~ その1
平成26年10月19日
《基調講演》
「慢性痛対策が医療を救う」 愛知医科大学学際的痛みセンター教授 牛田享宏先生
【痛みとは・・】
「痛み」は、頭(脳)が痛みを経験したら「痛み」である。痛みは「感覚」と、つらい苦しいなどの「情動体験」の合わさったものと考えられる。(したがって、その治療には体と心の両面を診ることが必要)
【慢性の痛みは重大な問題】
慢性の痛みを抱える人は、30~40代の働き盛りの人が多く労働力の低下につながっている。数は少ないが難治性で激しい痛みがあり、ものすごく困っている患者さんも含まれる。また、痛みがあると、要支援要介護の状態になりやすくなるなど、痛みは重大な国民的問題である。
【痛みに対する現状】
痛みがあると、「原因」を取り除くために「手術」が行われることが多いが、実は、手術をしても痛みが取れないことは多い。
腰の痛みについて言えば、原因がわかるのは15%のみ。85%は原因はわからないというのが本当のところである。例えば、ほとんどの椎間板ヘルニアは、痛みの原因にならないことが各種調査から明らかになっている。しかし、今でも多くの人や医師が、椎間板ヘルニアが痛みの原因であると信じており大変困った問題である。
痛みは、「記憶」や様々な要素が複雑に絡み合った悪循環の結果で起こっていることが多く、例えば手術をしたから治るというものは多くない。また、痛みがあると安静にしがち。しかし、安静は、廃用などの問題に結びつき、更に痛みの悪循環を引き起こす危険がある。
つまり、痛くても動かすことが慢性の痛みでは必要。海外の「痛みセンター」では、リハビリが充実しているが、わが国では不十分である。
慢性の痛みには、抗鬱剤、抗てんかん剤、オピオイドなどの薬が使われる。一定の効果は期待できるが、副作用の問題も多く、薬の使用は慎重に行われなくてはならない。また薬だけで解決する問題ではない。
【慢性の痛み診療を良くするために】
つまり、慢性の痛みは、重大問題なのに、現在の医療体系は有効な手立てをもっていない。従って、新しい医療体系作りが必要である。
慢性の痛みを増やす要因には、家族関係、精神の問題も関わっており、慢性痛の悪循環を作り出している。
破局的思考⇒恐怖・不安・不眠⇒痛みの憎悪。
痛みは、社会経済的にも大きな影を落としており、その医療費も莫大である。また、慢性の痛み治療に対する患者の満足度は低い。
従って、「慢性痛=体+こころの問題」としてとらえた診療システム作りと、予防のための国民教育を進めなければならない。そのためには、診療科の枠を超えた慢性痛教育を進めることが必要である。
文責 ぐっどばいペイン事務局 若園
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